ビジネスモデル特許について 解説 弁理士 加藤 雄二


 ビジネスモデル特許という言葉が盛んに新聞や雑誌、TV等に登場しています。

 マスコミの報道のされかたによっては、これまで特許されたことが無いものまで特許されるよ
うになったというニュアンスに聞こえます。

 しかし、日本の特許庁が特許制度のしくみを変えたわけではありません。審査方針自体はな
にも変わっていません。

 コンピュータやネットワークシステムの発達のおかげで、これまで特許とはかかわりのなかっ
た分野でも、特許をとることができるようになり、特許への対策が必要になったというように理
解して下さい。


 特許庁の方針といえば、何年か前に特許庁が、コンピュータプログラムに関する発明につい
て特許を与えるという新しい方針を打ち出しました。

 そのとき、私は、コンピュータプログラムに関する特許とはどんなもので、具体的に何が特許
になるかを分かりやすく解説した「伊達餅の発明と特許」というお話を作りました。

 これは、私のホームページで紹介しています。添付したものをちょっと読んでみて下さい。



 このお話しでは、伊達餅の構造が新しければ、伊達餅の構造も、伊達餅の製造方法も、伊
達餅を作るロボットも、このロボットを制御するコンピュータプログラム(ロボット制御用プログラ
ム)もみんな特許になりますよ、という説明をしています。

 これはビジネスモデル特許にそのままあてはまります。



 なお、ビジネスモデル特許と伊達餅の製造方法には、ひとつだけ、おおきな違いが有ります。

 伊達餅の製造方法は、特許法の条文上、明確に特許をとることを認められているジャンルの
発明です。

 一方、例えば銀行とか旅行会社といったサービス業によるサービス方法は、特許法の条文
解釈上は、特許をとることが認められていない発明なのです。

 特許の対象はあくまでも「技術」であって、技術開発に無縁な商業的なアイデアには特許が
与えられないというのがその理由です。

 だから、金融商品は工業製品と違って、そのままでは特許の対象にはならないのです。

 どんなに手の込んだ機知に富んだサービスでも、人手だけで行われている限り、そのサービ
ス方法は、特許の対象ではありません。

 ところが、最近では銀行とか旅行会社といったサービス業が例外なくコンピュータを導入して
います。これらのサービスはほとんどコンピュータにプログラミングをして行われます。また、イ
ンターネットなどのネットワークを駆使して行われます。

 その場合には、コンピュータやネットワークというハードウエアを使用した、高度な通信技術
やプログラミング技術が介在してきます。

 即ち、金融サービスをするコンピュータシステムは、特許法で認めている「技術」を含んでい
るわけです。

 

 銀行でお皿に乗ったお金を人間が手で数えている場合にはどんなに格好良くスマートに数え
ても特許になりません。一方、これをコンピュータやロボットにやらせた場合には特許になりま
す。お金を拾い上げる方法、同じ硬貨を見つけて積み重ねる方法、数えて集計する方法等、ど
れをとっても、ロボットにやらせるには「技術」がいるからです。

 株の取引をコンピュータネットワークを利用して行う場合にも、コンピュータの操作にいろいろ
な工夫がいります。それは単なる商法ではなく、「技術」が伴うものです。

 なお、「いままであたりまえにやってきたことでもコンピュータを使えばなんでも特許になる」と
いったふうに解釈される報道で、勘違いをされる方がおいでになります。

 新しいビジネスに特許がされるのであって、新しくもない、これまで誰かがやってきたあたりま
えのビジネスをそのままコンピュータ化しても特許にはなりません。

 新しいアイデアを作りだした人に特許をするというのが、特許制度の大原則ですから。

 

 新しいサービス方法を考えて、これをロボット(コンピュータ)に自動的に実行させれば、そう
いう動作をするロボット(コンピュータシステム)も、ロボットを動作させるコンピュータプログラム
も新しいから特許になるというわけです。このへんが伊達餅の話しと共通するところです。

 

 ビジネスモデル特許自体、どんな業種でも関係の無いところは無さそうです。

 これまで特許戦争を繰り広げてきた家電業界やパソコン製造業界などでは、しっかりした知
的財産権管理部門を持っており、日常業務の延長線上にありますから、何も驚くことはありま
せん。しかし、特許など無縁だと思われていた業種では、対応の良し悪しが将来の会社の運
命を決めることになりそうです。

 逆に、特許など無縁だと思われていた業種こそ、ビジネスモデル特許を取得すると大きなみ
かえりが期待できそうです。



 2001年1月からソフトウエアの審査基準が改正されました。

 長い間かかりましたが、やっと、コンピュータプログラムそのものが特許を認められるように
なりました。

 法律が改正されたわけではありません。
 運用がかわっただけです。
 特許庁での法律の解釈がかわったということです。
 形式的なことであり、あたりまえのことですが、ずいぶん時間がかかりました。


 さあ、こんどは、コンピュータプログラムの発明をどうやって強力な特許にするか。
 これからが、われわれの腕の見せ所のような気がします。


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